オンライン原稿
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読売新聞のコメント
読売新聞(全国版)2008年1月25日朝刊家庭面に「うつノート:回復をめざして (4) 」という記事が掲載されている。掲載の約1週間前に記者が取材に訪ねてきた。「フォーカシング指向心理療法を受けて鬱が治ったわけではないが、ずいぶん心が整理できた方を取材している、フォーカシングについてのコメントが欲しい」というのが取材の趣旨。
たしかに、気分障害に対して心理療法は適応かどうか、これは議論されるところである。一方、私自身がかかわった気分障害のケースでも、心理療法(フォーカシング指向心理療法)が効を奏したケースは何例もある。これはいっけん、矛盾しているようにも思えるが、細かく考えてみると、いくつかのパターンが見えてくる。
「お薬は浮き袋」と僕はいつもクライエントに伝えている。「泳げないで溺れているときには浮き袋が必要です。それがないと沈みます。浮き袋を付けているうちに自然と泳げるようになる人がいます。少しは泳げるようになったけど、まだまだ、という場合は、私たちセラピストは泳ぎのコーチをします。」こう言って医療にかかることや心理療法への動機付けをしている。
うつ状態がひどいときには、心理療法を受けるエネルギーさえもないだろう。睡眠、休養とお薬でエネルギーを回復することが優先。つまり、気分障害に心理療法が適応かどうか、というよりも、どのタイミングで心理療法を導入するか、というのがポイントの一つ。
さて、ここでもう一つ、難しいファクターが介入してくる。「気分障害」とか「不安障害」などという病名は症状の分類なのだ。そして、お薬は症状を抑えるために研究開発されたもので、実際に症状を抑えることが実証されている。しかし、症状の分類は、実際にはその病名の患者さんが、どんなことで苦しんでいて、どんな生き方をしていて、どんな人なのか、といったことを分類したわけではない。つまり、同じ病名がついていても、まったく違ったことを悩んでいたり、考えていたりするものだ。病名が同じでも人は違う。だらか、一概に「鬱には心理療法が効く」とか、「効かない」あるいは、「鬱には認知行動療法が効く」とか「効かない」とか「フォーカシングが有効だ」とか「有効ではない」などとは言いにくいのが実情だ。さらに、患者さんの側からみると、セラピストの技法やセラピストが用いる理論よりも、セラピストという人が重要なのだ。「あの先生はいい先生だ」「信頼できる先生だ」とか、「あの先生は頼りない」などと見ているのだ。つまり、心理療法を導入するタイミングだけではなく、そしてまた、心理療法の種類の選択以上に、人と人の出会いがもっとも大切なことなのかもしれない。
読売新聞の記事の最後の行、記者が上手くまとめてくれた。「療法よりもカウンセラーとの相性が重要だと思う。主治医と相談してほしい。」この発言の中で僕が考えていたことは、ざっとこんなところだ。
2008/02/04